サーリアホのオペラ、「彼方からの愛」、現代音楽では珍しいことに、
違う演奏のDVDとSACDがあります。
DVDの方はサロネン指揮フィンランド国立歌劇場管弦楽団、
クレメンス役にアップショウなどの顔ぶれ。
SACDの方は、ケント・ナガノ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団、
クレメンス役エカテリーナ・レキーナなどの顔ぶれ。
さて、絵付きのDVDと、音質でまさるSACDということで、印象がかなり違います。
DVDの方はその静謐な水を印象的に使った舞台演出とともに、
サーリアホ特有の透明感が相乗効果で非常に美しいです。
サロネンはサーリアホ作品をよく指揮していますし、しっかり把握している印象。
SACDの方は、さすがに細かいところまでよく聞こえます。
特に合唱がくっきりしていて、ちょっとびっくりしました。
ケント・ナガノは初演指揮者。
メシアンのアッシジのフランチェスコなどでも成功していますし、
ザルツブルク音楽祭でのこのオペラの成功に一役買っていたのかもしれません。
まあ、本音をいうと、私はサーリアホの音楽は80年代が一番好きなんですが。
とくに切り詰められた編成の作品での研ぎ澄まされた感性は、
これはすごい若手が出てきたもんだ、と思い、それから追っかけていますが、
保守的といわれるザルツブルクの聴衆を意識したのか、
語法が変化しているなと思います。
たぶん、現代音楽なんか聴かない人でも受け入れやすい方向へと。
これが自発的なものかどうかはわかりませんが、
80年代、あるいは、Du cristal、...A la fumee の2部作(89~90)の頃の
ほうが、個性的で魅力があったと思うのは懐古的にすぎるでしょうか。
サーリアホは2つ目のオペラも書いているようですが、未聴です。
ただ、まあ聴きやすい現代オペラがあるのはいいことなのかもしれませんが。
私は、新作の無いジャンルは滅びる、というのが持論ですので。
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