一般の方には「獅子舞」が一番なじみがあるのではないでしょうか?
ところで、現在の獅子舞より前に、雅楽の全盛時代にもすでに
獅子舞はあったようです。
雅楽はあまりなじみのない方は「越天楽」のように
器楽合奏だと思われがちですが、
神楽歌や催馬楽、朗詠などの歌曲や、
舞楽のようにその名の通り舞がつくものも多いのです。
最近は舞楽は公演でも盛んになってきて、
専門家でない方たちの趣味としても結構人気が出てきているようです。
こんなCDがあります。
舞楽
この2枚組CDは左舞と右舞でそれぞれ1枚構成し、
ライナーノートには舞踏譜までついているというすばらしいものです。
上述のように舞楽を趣味でやってらっしゃる方には特に最適です。
さて、「楽家録」 という雅楽古書があります。
そこに獅子舞についての記述があります。
「獅子者、非笙篳篥之曲、唯為横笛秘曲」
これを読んで、「え?雅楽って合奏じゃないの?」と思われる方も
いらっしゃるでしょうが、平安時代には龍笛はもちろん、
楽筝や楽琵琶独奏の秘曲があったらしく、源氏物語や
平家物語に曲名がいろいろ出てきます。
残念ながら、「秘曲」ということで伝承をなかなかしなかったために
現在では伝わっていません。
ただ、当時は独奏曲も各楽器にあったわけですね。
そして獅子ものは横笛の秘曲だったというわけです。
そうすると、能楽囃子の「獅子」の特殊性も関連あるかもしれません。
能楽囃子は多くは黄鐘基調、まれに盤渉基調なのですが、
「獅子」だけは獅子独特の特殊な基調をしています。
また、かなり格の高い曲とされています。
能楽囃子の「獅子」はこれに収められています。
能楽囃子名曲集
笛は名手・藤田大五郎さんです。
ところで、能の囃子というのは、同じ曲でも演目によって
微妙に雰囲気が変わります。
「石橋」は「獅子」が見せ場の曲なので、そちらも紹介しておきます。
さて、他にも地歌には「獅子もの」というジャンルがあります。
「○○獅子」という曲名で、手事もの(長い器楽間奏部のある曲種)の
源流の一つで、古いジャンルです。
そのなかの 藤永検校作曲「八千代獅子」の手事は、
もともと尺八(といっても一節切という普化尺八と異なるもの)
の曲を三絃に移したものです。
やはり、笛と関連が強いわけです。
その他、尺八古典本曲でも「○○獅子」というものは例外的といってよいほど
拍節感が強いことで異彩を放っています。
やはり民間伝承が起源なのかもしれません。
江戸が拠点だった琴古流尺八本曲はとくにそういう「○○獅子」が
多いのですが、興味深いことに、同じく江戸が拠点だった
胡弓藤植流の本曲でも獅子ものが多いのです。
私は、相互交流がかなりあったのではないかと想像しています。
獅子というのはこのようにいろいろなジャンルにわたって様々あり、
雅楽書である「楽家録」に記述があることを考えると、
かなり古い起源があるのではないでしょうか。
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