地味ながらいろいろとディスクも出ています。
名盤BOXを中心に概括してみます。
トマス・ビーチャム/イングリッシュ・ミュージック(6CD限定盤)
(Amazon) (HMV)
これは実質的にディーリアス5枚組に
1枚のオマケがついているようなものです(笑)。
いうまでもなく、ビーチャムはディーリアスの
熱烈な擁護者で、録音が簡単でなかったこの時代に、
現代音楽をこれだけ大量に残すこと自体すごいことです。
このBOXのリマスタリングは非常によく、
モノラル期の録音の良さを感じさせてくれます。
私がディーリアスを真面目に聴き始めたのはつい最近で、
伝説的なビーチャム指揮のディーリアスがまとめて
入手できることができ、後発組のメリットが活かせました。
演奏の感想などは後述のまとめで。
ディーリアス生誕150年記念ボックス(18CD限定盤)
(Amazon) (HMV)
これはさすがEMI、ディーリアス録音に賭けているなあ、と
圧倒されます。ビーチャム、バルビローリの大御所ふたりから、
メレディス・デービス、チャールズ・グローブスなど、
ディーリアス演奏史がそのままBOXになった感じです。
歌詞がないのが残念なのですが
(EMIの廉価オペラシリーズでは、歌詞対訳をCD-ROMで付属しているので
同じEMIの廉価盤ということでなおさら惜しい)、
3つのオペラをはじめ、「人生のミサ」「レクイエム」をはじめ、
管弦楽と声楽の大規模作品が一望できます。
本当に、歌詞がついていれば…。
私は最初にディーリアスを聴いたのは、ここにある数々の演奏なので、
個人的思い入れがあるため、客観的判断ができるかわかりませんが、
いきなりこれだけの集成を入手できるというのはすごい時代です。
ディーリアス・エディション マッケラス&ウェールズ・ナショナル・オペラ管、他(8CD)
(Amazon) (HMV)
対して、イギリスのもうひとつの雄、DeccaのBOXです。
これは惜しくも亡くなったマッケラスを中心にしています。
マッケラスは、ほかのオペラの録音の構想も持っていたらしく、
働き盛りでの急逝は惜しまれてなりません。
演奏の感想は後述のまとめで。
Delius Collection(7CD)
そして、これはある意味目玉です。
画像がまだ登録されていないのでこのかたちで紹介します。
これは、ディーリアスが全盲となったのち、
口述筆記で作曲をした、その共同作業者、
フェンビーの指揮が中心の、Unicorn-Kanchanaからかつて
リリースされていた7枚の「Delius Collection」 のBOX化です。
このレーベルはすでになく、長らく入手不可だったものを、
Heritage が出してくれました。
さて、そろそろそれぞれの感想など。
ビーチャムはどうやらディーリアスを印象派風にとらえ、
かつての印象派演奏の手法を援用しているように感じます。
おそらく、現代音楽としてのディーリアスを紹介したかったのでしょう。
それが、長らく受け継がれているように思いました。
それがEMIのBOXです。
対して、ヤナーチェクの権威としても知られるマッケラス、
彼は、声楽作品でより違った視点を持っているように感じます。
言葉というものはとても生命力がある。
それはヤナーチェクの生命力の根源ですが、
声楽作品に名作の多いディーリアスでもどこかその
生命力を発揮しているような気がします。
はたしてこれが、この先のディーリアス演奏にどう影響するか、
ちょっと注目してみたいところです。
そしてフェンビー。彼はあくまで作曲家であって、
職業指揮者ではありません。
そのためなのか、印象派風の雰囲気はあまり出しません。
そのかわり、霧が晴れたように、作品の骨格がはっきりと
姿を現すんです。これはびっくりしました。
ディーリアスの作曲手法は基本的には変奏技法です。
「アパラチア」や「ブリッグの定期市」のように、
はっきりした変奏曲形式を使っているものはもちろん、
たえず前段の変奏が連続して結果的に構造的に堅固なものに
なっているんです。これはフェンビーの指揮で初めて気が付きました。
まあ時代もあるかもしれません。80年代になると、かつてのように
印象派の作品だから、と、輪郭をぼやかすほうがよい、というような
風潮はなくなってきていました。
だから、フェンビーがどこまで意図的だったかはわかりません。
でも、結果として、ディーリアスが堅固な形式感覚によって
作曲をしていたということをまざまざとみせつける。
面白いと思います。
さて、ディーリアスのBOXがこれだけでても、まだまだ
初期オペラをはじめ(BBCとArabesqueに音源はあるんです!)、
出ていない作品がたくさんあります。
Stoneはディーリアスの歌曲の集成を進めています。
まだまだ未知の作品、演奏を楽しめそうですね。
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