スクリャービンに魅了される時期があると思います。
なぜ今更この全集の記事を書くかというと、
この「作品番号付き」の作品に限定したBOXのあと、
最近、「作品番号なし」の作品も録音し、リリースされたからです。
とりあえず、お聴きになった方も多いかと思いますが、
「作品番号付き」のBOXを「その1」として振り返りたいと思います。
スクリャービン:ピアノ独奏曲全集 レットベリ(8CD+ボーナスDVD)
(Amazon) (HMV)
彼女はスウェーデン国籍なので、 ”Lettberg”で「レットベリ」と発音します。
全8枚組、特典DVD付きの、作品番号のあるピアノ独奏作品の全集。
曲はジャンル別に分けられて収録されています。
レットベリは冴えた技巧の持ち主で、速めのテンポで弾いています。
耽溺しやすいスクリャービンの音楽の特性上、人によっては
実際以上に感覚的にドライな印象を受けるかもしれません。
感情表現という意味では、マズルカとエチュード、
それに詩曲は個性も感じられ、よいと思いました。
とりわけOp.69の2曲の詩曲は、好きな作品ということもあり、
個人的にはこだわりがあるのですが、面白く聴けました。
ソナタや前奏曲では競合盤も多いし、これが一番という
わけではないと思いますが、初期ソナタなどは技巧の冴えが
より相性がいいように感じました。
ただ、ソナタ第8番はいささかテンポが速すぎかもしれないですね。
前奏曲では中期以降のスクリャービンの個性が発揮し出される
Op.31以降の曲をとりわけ面白く聴けました。
特典DVDは、レットベリのインタビューと「MYSTERIUM」と
名づけられたマルチメディアプロジェクトの二つ。
インタビューは英独仏の字幕が選べるようになっていて、
この点でポイントは高いと思います。
「MYSTERIUM」はスクリャービンの作品の抜粋からなる
一種の組曲(6つの部分から成る)で、それぞれ、
ライナーノートにもあるスクリャービン自身の作品への
コメントと、プロメテウスの色光ピアノの指定などを参考にしつつ、
レットベリ自身のイメージをアンドレアス・シュミットが
具体化したものということです。
「MYSTERIUM」というタイトル自体、スクリャービン好きならおなじみですね。
そう、晩年に構想しながら未完に終わった「神秘劇」です。
その疑似体験ということなのでしょう、本当にスクリャービンが好きなんですね。
オマケとしてはなかなかよく出来ていると思いますが、
単体としてはどうかな…映像技術は日本はやはりすごいな、
ということを逆に感じました。
ポンティの古い全集は音質があまりにも貧弱ですので、
この全集の意義はかなりあると思います。
曲目一覧には作曲年も載っていますので、
スクリャービンの作風の変遷をたどる上でも有用です。
このBOXが出たときは本当にうれしかったとともに、
「作品番号なしの作品も録音してほしかった」という気持ちも抑えがたいものがありました。
5年の歳月を経て、それが実現したのですが、
そのディスクについては、「その2」として、年明けにでもご紹介いたします。
さて、今年は更新が少なかったことが反省材料です。
書きたいことは色々あるのですが、ついついそのままになってしまうのが
凡人たる所以ですね、反省しないといけません。
何かの機会でこのブログを訪れてくださった皆さん、ありがとうございました。
どうぞよいお年をお迎えください。